AIによる図面認識・推論POC

国内大手建築メーカー(以下、クライアント企業)では建築図面に描かれた材料や設備等の製品を特定する作業の効率化と精度向上のためのソリューションを調査研究しており、その一環としてAI技術を利用したPOC¹プロジェクトを実施した。

国内大手建築メーカー(以下、クライアント企業)では建築図面に描かれた材料や設備等の製品を特定する作業の効率化と精度向上のためのソリューションを調査研究しており、その一環としてAI技術を利用したPoC¹プロジェクトを実施した。
JP東京は、ソリューション・ベンダーの調査と選定時より参画し、PoCプロジェクト実施においてはPMOとしてプロジェクト推進をサポートした。

プロジェクト背景

クライアント企業では、建築図面に描かれた材料や設備等の製品を特定する作業(以下、拾い出し作業)に多くの時間を割いていた。また、この拾い出し業も専門性が求められ、作業者によって精度のばらつきがみられる等の課題が挙げられていた。
そこで、近年急速に進化を遂げているAI技術を利用して、建築図面から製品を拾い出す作業の効率化、精度向上、また実用化するための課題等を検討するために、PoCプロジェクトの実施を検討していた。

一方、画像データから物体を認識・推論するAI技術の実績を有したソリューション・ベンダーは多数が存在しており、本PoCプロジェクトに最適なソリューション・ベンダーの候補を選定するに当たって、社内リソースが不足している中どのように進めたらよいか支援が必要と考えていた。

JP東京では、AIを含めたDX関連技術の調査研究の実績があることや、プロジェクト管理支援サービスを行っていることから、このPoCプロジェクトの計画と実施を支援すること運びとなった。

プロセス

プロジェクト計画フェーズ
JP東京は、クライアント企業へのヒアリングや議論を通して、本PoCプロジェクトの要求を整理し、RFI²、RFP³および評価基準書を作成した。各ソリューション・ベンダーとのQ&Aと提案プレゼンテーションのファシリテーションを行い、最終選定の取りまとめを実施した。

  • RFI対象 : AI技術を利用した画像処理・認識を得意としているソリューション・ベンダーを調査し、20社強のショートリストを作成。クライアント企業とレビューし、10社弱に絞込み。

  • RFP対象 : ソリューション・ベンダーからの回答書をレビューし、RFP対象となるソリューション・ベンダー候補を数社に絞込み。


プロジェクト実施フェーズ
選定されたソリューション・ベンダーがクライアント企業とプロジェクトを推進する一方、JP東京はアドバイザリーとしてPMOの役割を担った。プロジェクトの目的に沿った進行がされているか、また、プロジェクト評価報告書が読み手(特にプロジェクトスポンサーと他関連部門メンバー)にとって理解できるものになっているか等、JP東京のコンサルタントのスキルや経験をもとにソリューション・ベンダーを支援した。

成果

本PoCプロジェクトでは大きく2つの目的があり、ほぼ期待通りに目的を達成できた。 一つ目の目的は、図面認識・推論の精度を確認することであった。学習済ベクトル⁴平面図での推論では、図面のバリエーションを増やすことで高精度の推論が可能になったことを確認できた(高適合率、高再現率、低CER⁵)。

もう一つの目的は、AIによる画面認識・推論に関する基本的な知見を獲得することであった。機械学習の画像認識・推論の分野において、必要タスクや作業ボリューム等の基本的な技術知識を習得できた。また、画像認識やOCR⁶文字解析に関して基礎的な評価手法も習得できた。

ソリューション・ベンダーがプロジェクト評価報告書を作成する一方で、JP東京はエグゼクティブ向けの評価報告書を作成し、幅広い読み手に対してPoCプロジェクト成果を報告できた。



¹PoC:Proof of Conceptの略称。概念実証
²RFI(Request for Information):企業情報、ソリューション情報、実績等の情報提供依頼書
³RFP(Request for Proposal):提案見積依頼書
⁴ベクトル図面:線分で表現された図面。読込時はjpg変換した。
⁵適合率:どれだけ正確に推論できたか
⁵再現率:取りこぼしなく推論できたか
⁵CER(Counterfactual Error Rate):どれだけ誤変換があったか
⁶OCR(Optical Character Recognition/Reader):光学的文字認識